山びこ学校 (岩波文庫)



山びこ学校 (岩波文庫)
山びこ学校 (岩波文庫)

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書くことの大切さ

まず、戦後の山形の農村の暮らしぶりが、現代人の私にとって
とても興味深いものでした。義務教育とは名ばかりで、家の畑を
耕さなければならない、炭作りを手伝わなければならない、
親の介護をしなければならない、そんな理由で学校に行きたくても
いけない子どもたち。それを支える地域の人々や先生。この本には
戦後の農村生活を描くドキュメンタリーとしての価値があります。

さらに、子どもたちの思考のプロセス、その文章の背後に見え隠れ
する無着先生の指導と熱意を素晴らしいと思いました。
貧しい生活の中で、子どもたちが「本当にこれでいいのか」
「大人たちが言っていること(百姓は勉強しない方がいい、という
ようなあきらめ論)は本当なのか」「自分たちの暮らしをよくする
ためにはいったいどうしたらいいのだろうか?」....
作文を通して子どもたちは現状の生活の中の矛盾に気づき、
ひたすら考え、皆で議論し、建設的な結論を導き出していきます。

文章を通じて現状を認識し、問題を把握し、改善策を考え、
よりよい未来のために新しい行動を起こしていく子どもたち。
自己改革・地域改革の第一歩としては、何よりも文字にして書く
ことが重要であるということを私自身が気づかされました。

何だか難しい問題に取り組んでみたくなる、そんな本でした。


戦後は終わったのか

青銅社から百合出版、角川から岩波へ、この書は紆余曲折を経ながら読み継がれている。この岩波版の帯は「戦後50年 子供の眼がとらえた昭和の名作」と書かれている。無着成恭が、こどもたちとともに考えた「幸せへの道」はまず貧乏の克服だった。いわゆる当時の物質的な「貧しさ」はすでに克服されそれにかわって「こころ」の問題が起こってきた、とよく言われるが本当だろうか。この本をまた新たに読んでみて感じるのは「もの」でさえ豊かになっていない、という実感である。無着がこども達と徹夜でつくった木の三輪車やスクーターを越えるおもちゃが今あるのだろうか。この本の冒頭の写真(1951年春 山元風景)のこどもたちの顔をじっとみてみれば、何が「幸福」なのかが心の奥から聞こえてくる。この時代の東北は確かに貧しさが哀しかった。けれど、こどもは悲惨ではなかった。この本のなかに無着と遊び笑い転げる子供たちの姿が見える限り我々はこの本に目をつむることはできない。この岩波版へのあとがきで無着は「今日的状況」について1つの発言をしている。戦後は終わったのか、もう一度考えてみたい。



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